最高裁判所第一小法廷 昭和24年(オ)360号 判決 1951年4月12日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告理由第一点について。
罹災都市借地借家臨時処理法三条で同法二条一項但書を準用しているのは、罹災建物の敷地を権原により現に建物所有の目的で使用する者があるときは、その者の利益を保護するため、罹災建物の借主に借地権譲渡の申出権を認めない趣旨である。ここに権原によりその土地を現に使用する者とは法律上何等かの権原に基いてその土地を現に使用している者を意味するのであり、所論のようにその土地につき借地権譲渡の申出権を有する罹災建物の借主があるか否か又何人であるかに関し、その権原者が善意であると悪意であるとを問わないものと解するを相当とする。それ故、本件において原審が所論の善意悪意の点につき審理をしなかつたことは、当然であり原判決には所論のような違法はない。
同第二点について。
原判決は上告人主張の転貸借については賃貸人たる東京都の承諾を得ずしてなされたものであるとの事実を確定し、この事実に基づき、所論の転貸借は上告人及び訴外富田新六郎(賃借人)間の債権関係として存在することは格別、賃貸人たる東京都との関係においては適法に成立したものではない。すなわち上告人は唯右訴外人に対してのみ本件土地を使用収益せしむべきことを請求し得る権利を有するに止まり、東京都及び被上告人との関係においては本件土地につき使用収益を主張し得べき何等の権利関係を有するものではない。従つて上告人は罹災都市借地借家臨時処理法二条一項但書にいわゆる権原により現に建物所有の目的で土地を使用する者に該当しないと判示したのである。この判旨は首肯し得るのであり原判決には所論のような違法はない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い主文のとおり判決する。
右は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔)